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悪い夢を見ていた気がする。
やけにうるさい声が聞こえたから、私は思わず目を開いてしまいそうになった。
薄目を開けて周囲の様子を確認すると、看護師たちが涙を流して喜んでいた。奇跡だ、ありえない、などの声が病室に響いている。何故だろうか。
周囲の喧騒がやけに耳に障り、私は反射的に声を出す。
「う……る……さい」
更に驚き、発狂したように叫ぶ彼女たちの声がうるさく、耳を塞いだ。
目を瞑ろうと手を動かそうとすると、手紙が添えられていることに気付く。
上手く動かない手を何とか動かして、手紙を読んだ。そこにはグネグネと曲がったミミズのような書体でこう書かれていた。
「お大事に」
……誰からの手紙だったのかはわからないが、気付いたら涙が流れていた。頬を伝って緩やかに流れ落ちて行った涙は、手の甲に優しく触れる。
叫ぶ看護師たちとは反対に、病室の外からは優しい彼の声が聞こえた気がした。
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