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「はぁ…疲れたぁぁぁ……」
家賃1万円が打倒そうなボロアパートに、中年のおじさんが帰宅する。
二階にある自室への階段を上がる姿は、まるで死霊の様で、肩を落としふらふらとした足取りだ。
「はぁ……。」
ため息を深くつき、自室の鍵を開け中に入る姿は、同情する余地もないほどやつれきっていた。
「ただいまぁ……」
誰もいない事は分かっている。
だが、言わずにいられないのが、一人暮らしのサガ。
おかえりなさい。と言ってくれる人がいるものなら、それは最大の贅沢だと自負している。
「おかえりなさい。あなた。」
「あぁ……ただい……まぁ!?」
部屋から出てきたのは、大きなトランクを持った、自分より年下と思える女性。
肩まであるウェーブがかった栗色のロングヘアをなびかせ、笑顔で出迎えてきた。
「えっ?だれ?」
それが第一声になるのは、当たり前のこと。
見ず知らずの女性がいきなり現れ、新婚の嫁の様にあなたっと出迎えてくれたのだ。
ぽかーんと口を開け、立ち尽くす姿に、女性ははっとし、三つ指を立て土下座しはじめた。
「おかえりなさいませ。旦那様。」
「いやいやいや……。
そうでなくて!
君、誰なの!?
なんでうちにいるわけ!!?」
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