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うまい言葉が見つからなくて、口ごもっていると、服部さんは続けた。
「……冗談だよ。
あの日はオレが悪かった。
冷静になってみたら、あれは強姦未遂だよな。
訴えられてもしかたない。
俺もちゃんと謝ろうと思って呼んだんだ」
口調は穏やかで、押し付けるような感じもないし、席から立ち上がる様子もなく、私たちの距離は開いたまま。
冗談なんだ……。
私は、ホッと息を吐き出した。
あんなことが起こる前の服部さんも、私といるときは優しくて、
こんなふうな穏やかな表情を見せてくれてた。
怖いと感じたのは、あの日だけだった。
無意識のうちに体に入っていた力がフッと抜けていく。
怒ってるわけじゃなかったんだ。
ずっと感じていた痛いくらいの視線は、
謝るタイミングを探していたのかもしれない。
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