196人が本棚に入れています
本棚に追加
私が頷くと、服部さんはすごく優しい笑みを浮かべた。
なんの疑問も持たずに抱かれていたあの頃の服部さんは、こんな感じだった。
服部さんは、力強くて……
だけど、優しくて……。
私の体に残った記憶が、
頭のどこかのスイッチを押そうとして、慌てて記憶を振り払った。
「年に一度の社員旅行だし。楽しみましょうね」
「あ、あぁ……」
とりあえず、捻れてしまっていた関係がまた一つ、元に戻った。
人を恨んだり、憎んだり、嫌いになったり。
そんな醜い感情のままでいることが、ずっと心に暗い影を残していたから。
「それじゃあ。私はこれで」
「あぁ……。話ができてよかったよ」
服部さんは最後まで席を立つことなく、
私は最後まで席に座ることはないまま、
笑顔で会議室を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!