捻れた関係(続き)

27/28
前へ
/32ページ
次へ
私が頷くと、服部さんはすごく優しい笑みを浮かべた。 なんの疑問も持たずに抱かれていたあの頃の服部さんは、こんな感じだった。 服部さんは、力強くて…… だけど、優しくて……。 私の体に残った記憶が、 頭のどこかのスイッチを押そうとして、慌てて記憶を振り払った。 「年に一度の社員旅行だし。楽しみましょうね」 「あ、あぁ……」 とりあえず、捻れてしまっていた関係がまた一つ、元に戻った。 人を恨んだり、憎んだり、嫌いになったり。 そんな醜い感情のままでいることが、ずっと心に暗い影を残していたから。 「それじゃあ。私はこれで」 「あぁ……。話ができてよかったよ」 服部さんは最後まで席を立つことなく、 私は最後まで席に座ることはないまま、 笑顔で会議室を後にした。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

196人が本棚に入れています
本棚に追加