177人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
なんだったんだろう。
この1ヶ月。
私にとっては、すごく大きな一ヶ月だった。
だけど、森川くんは、どういうつもりで……。
「……どうして、私をあのお店に連れてってくれたの?はじめはあの日、ズボンと靴を汚してしまった代償だって思ってたけど……
実際、森川くんは、そんなにお店に深く入り浸ってるわけじゃないし……。
ずっと不思議に思ってた」
今まで、ちゃんと聞いたことがなかったっけ。
「……なんでだろうな。
まぁ、なんとなく、面白そうだと思っただけだな。
田口が、あんなに馴染むとは思わなかったし」
なんとなくか……。
森川くんは、もしかしたら、私に居場所を作ってくれたんじゃないかって。
あそこに連れて行ってくれたのは、森川くんの優しさだったんじゃないかって。
私に都合のいいように解釈をして、だから、私は、こんなに惹かれてしまったんだ。
ずっと分からなかったけど、最後まで、よく分からないまま……。
『なんとなく』
それが全てなんだよね……。
「わかった……
次に行った時に、ひかりさんには、私から言っておくよ」
「じゃあ。田口が言っといて」
「うん」
もう、終わりにしよう。
もう一度、ちゃんと自分の足で更地に立ってみよう。
そう思ったとたん、
息をするのもままならないくらい、呼吸が苦しくて、
気を緩めると泣いてしまいそうで、
私は唇を強く噛んだ。
最初のコメントを投稿しよう!