179人が本棚に入れています
本棚に追加
これだけじゃ足りなくて、もっと欲しいのに、私は、旅行カバンを肩にかけたまま棒立ちで、声を発することもできなくて、
森川くんは、もう一度小さく笑ってから、
体ごと離れていく。
「じゃあな。明日、寝坊すんなよ」
何もなかったような、いつもの口調。
「う、うん」
森川くんは、今度こそ立ち止まることなく、運転席に乗り込んで、車を発進させた。
車がどんどん遠ざかって、カチカチとウインカーを出し、角を曲がっていく。
あんな、子供みたいなキスなのに。
体中から熱を発してるみたいに熱くて……。
どうしちゃったんだろうってくらい、
胸が痛い……。
不安がまったくないわけじゃないけど、
森川くんを信じたい。
信じても大丈夫だよね……?
私は、好きでいていいんだよね……?
最初のコメントを投稿しよう!