本心の行方

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これだけじゃ足りなくて、もっと欲しいのに、私は、旅行カバンを肩にかけたまま棒立ちで、声を発することもできなくて、 森川くんは、もう一度小さく笑ってから、 体ごと離れていく。 「じゃあな。明日、寝坊すんなよ」 何もなかったような、いつもの口調。 「う、うん」 森川くんは、今度こそ立ち止まることなく、運転席に乗り込んで、車を発進させた。 車がどんどん遠ざかって、カチカチとウインカーを出し、角を曲がっていく。 あんな、子供みたいなキスなのに。 体中から熱を発してるみたいに熱くて……。 どうしちゃったんだろうってくらい、 胸が痛い……。 不安がまったくないわけじゃないけど、 森川くんを信じたい。 信じても大丈夫だよね……? 私は、好きでいていいんだよね……?
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