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「あー。めんどくせぇな……」
めんどくさい。
私が……?
「もう、離して」
私の肩を掴んだままの森川くんの腕を両手で掴んで、引き離そうとするけど、
私が力を入れると、森川くんも力を入れて、離れてくれない。
「まぁ、誰が何の噂を流してるかなんて、
大体想像はつくけど……。
本当、女ってめんどくせぇ」
「悪かったね……」
めんどくさくて……。
私が、また少し口を尖らせると、森川くんはフッと笑う。
「お前じゃねぇよ。……つか、その顔、変だぞ」
『顔が変』とか……。
今、言わなくてもいいじゃん。
ますます、口を尖らせたけど、ちょっと腑に落ちない……。
「え……? 彼女。でしょ?」
彼女をめんどくさいってこと?
「あぁ。まぁな」
「?」
「大口の取引先の娘さん。断れるかよ」
「そんなの……」
断るでしょ?
って一瞬思ったけど、私だったら、断れないかもしれない……。
「……だけど……結婚……」
「だからぁー。しねぇよ。たぶん」
「しないの……?」
「俺は、一言もそんなこと言ってない」
「たぶん……?」
「先のことはわかんないだろ?
だけど、今はそんなつもりはないし。
周りから固めようとしてるあいつのやり方は、気に入らない」
周りから……。
森川くんの上司だったり、
ひかりさんや正己さんも、何か知っているみたいだった。
それは森川くんの意志には反してるんだ……。
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