179人が本棚に入れています
本棚に追加
森川くんは、ハハッと声に出して笑った。
「まぁ。兄貴の店の手伝いは、もう、いいだろ?
これからは、客として通ってやってよ。
とりあえず……ケリがついたら連絡する」
「……うん……」
胸が、いっぱいになっていく。
森川くんはスマホを取り出し、私の連絡先を聞く。
ずっと知らなかった森川くんのプライベートな連絡先。
私も、スマホを取り出して、森川くんの名前を刻んだ。
森川くんは、私の連絡先を入力し終わったスマホをサイドに、ポンとおくと、
ハンドルを握り、ギアを動かした。
「家の前まで送ってくから」
うん。
もう、無理やり降りようとは、思わなかった。
「ありがとう……」
それから、私たちはまた無言で、
ナビに表示された目的地まで、森川くんも静かに運転する。
沈黙は続いたけど、さっきとは違う。
ちょっと居心地が悪いのも、
何をどう話したらいいかわからないから……。
最初のコメントを投稿しよう!