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森川くんの車は迷うことなく、私の家の前の細い道路で車を停めた。
交通量はほとんどないけれど、たまに人は通る、一方通行の道。
「ここ?」
「あ。うん」
もう少しこのままで居たい気持ちを隠して、私が車を降りると、当たり前のようにエンジンを切って、森川くんも車から降りた。
森川くんは車の後部座席から、私の旅行カバンを取り出すと、私の前にそれを差し出す。
「じゃあ、また明日な」
「うん……。
送ってくれてありがとう……」
私は、向かい合っている森川くんを一度見上げてから、しっかり頭を下げる。
「また連絡するから」
「待ってる」
じゃ、と片手を上げてから、
再び運転席側に歩いていく。
もっと一緒に居たくて、もっと話がしたかったのは、私だけ……?
あまりにも呆気ないあっさりとした別れに、チクリと胸の痛みを感じる。
森川くんは、結婚なんてしなくて、
私の気持ちは、きっと森川くんにも伝わって、
ちょっと近づけた気がした。
だけど、森川くんの気持ちは、はっきりと伝えられたわけでもなくて、
やっぱりよくわからない……。
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