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森川くんの手が、私の肩をかすめるように伸びてきて、
私の髪にクシャクシャと触れたあと、頬に下りてきて止まった。
温かい手……。
火照った顔を上げることもできず、目だけで森川くんを見上げると、私をジーッと見下ろす優しい目。
ドクンドクンと速い鼓動が、耳から聞こえてしまいそう。
「…………」
視線が絡まったまま、ほんの数秒……。
その数秒が、やたら長く感じた。
フッと反らされた視線。
何かを期待していた唇が、もの欲しげに宙に浮いた時、
森川くんは、一度、グルっと周りを見回してから、フワッと下りてきた。
セットしていないサラサラの前髪が私の額をスっと掠め、ほんの一瞬、微かな音を立てて、唇が合わさった。
ただ、触れるだけのキスで、
きっと森川くんなら、挨拶のように誰にでもしてそうなキスなのに……。
体中の血が騒いで、
涙が出そうなくらい、
嬉しい……。
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