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合わさるだけのキスの後、ゆっくり離れていく森川くんは、ここに来てから今までで一番、穏やかな優しい表情をしていた。
どうして……。
「言ったろ。お前のこと応援してんだよ。
俺も、少しはちゃんとしようと思ってんだ」
髪を梳くように頭を撫でてから、もう一度、頬に軽くキスをする。
「この先は、ちゃんと守っておけ」
森川くんは、優しいのに……。
こんなに優しい森川くんは、見たことないってくらい優しいのに……。
胸が痛い……。
「でも……」
ヤダ……。
「田口もちゃんと頑張れよ」
「ヤダ……」
拒絶されたわけじゃない。
今、私を包んでくれる腕はこんなに優しいのに。
「……いなくならないで……」
私の精一杯の本心。
今、この時間が終わってしまえば、
本当に、終わってしまう。
会社も辞めてしまうんだったら、会うことすらなくなるんだ。
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