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森川くんが私を応援してくれるなら、
私も森川くんが進もうとしているのを邪魔しちゃいけない。
胸はやっぱり痛いけど、
少し浮かんでいた涙はいつの間にか引いていた。
「私……帰るね……」
森川くんの腕をすり抜け、脱ぎ散らかった服を探す。
「あぁ……」
森川くんもはだけた胸のボタンをとめていく。
「もう……終電ないよな……。送っていくわ」
壁に掛かった時計を見ると、もう1時を回っていた。
「いい。タクシーで帰れるし」
「いいから、送らせて」
「……うん……」
伝えたかったことは伝えられた。
森川くんの気持ちも聞けた。
来てよかった……。
ほとんど会話もないまま、帰る支度をした。
来るときは気づかなかったけど、アパート下の駐車場には、以前乗ったことのある、森川くんの車が停まっていた。
助手席に乗り込んで車が発進しても、
私たちは無言のまま、
車は私の家に近づいていく。
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