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私が心配なら、最後まで私の行方を見届けてよ……。
だけどきっと何を言っても、
もう私たちの距離は縮まらない。
歩き始めてしまった森川くんを止めることなんてできない。
「森川くんもね……。
ちゃんと仕事見つけて。
今度はフラフラしないで、
好きになれる人を見つけて、
幸せにしてあげて」
強がりたいのに、視界がどんどん滲んでいく。
「……あぁ……」
森川くんは、低く静かに一度うなずいた。
私の家の前の一方通行の細い道。
こないだと同じ場所に森川くんは車をとめた。
「じゃあな」
「うん。
送ってくれて、ありがとう・・。
元気でね」
「田口もな」
短い言葉をいくつ交わして、私は車の助手席から降りそのまま振り返ることなく、自分の部屋を目指した。
私が外階段を上り始めると、車のエンジン音が遠ざかっていくのが聞こえた。
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