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ずっと見えなかった私たちの未来が突然開けすぎて、
一歩を踏み出すのには勇気が必要だった。
重ねただけだった私の手を森川くんはギュッと掴み、膝まで下ろして、両手で包み込む。
「……だよな。改めて聞くと、ひどい男だな」
「森川くんの気持ちなんて全然見えなかったし」
「…………」
「だけど、森川くんと一緒にいれると思うだけでワクワクするの……。
幸せになんて慣れてないから、怖いけど……。
振り回されてもいいから、ずっと掴んでたい」
私の片手を包んでいる森川くんの両手にもう一つの手を重ねた。
「森川くんとずっと一緒に居たい」
握った両手を見つめたまま、うつむき加減に口にすると、フッと目の前に森川くんの顔が現れた。
下からすくい上げるように、森川くんの唇が、私の唇に触れる。
軽く触れ、すぐに離れた唇から囁くような声が聞こえる。
「もう離れないから。
俺も、ずっとお前のそばにいる」
うん。
「離さないで」
私は、小さく頷いてから再び森川くんとの唇の距離を縮めた。
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