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遠くでドンドンと壁を叩く音がする。
「おはよう!達己、仕事よ!ってそんなところで何してんのよ」
ドア越しに隣の部屋から女の人の声がした。
「もしかしてソファで寝てたわけ?何?ケンカでもした?」
この声の主は、そうだ、チカさん。
目覚めたばかりの頭の中が少しづつ覚醒していく。
ベッドに寝転んだまま目に入ったのは、天井から吊り下げられた電灯。
色とりどりのステンドガラスのカサにむき出しの電球。
ここは、イタリアなんだ。
そっか昨日。
私たちは結局、別々の部屋で寝たけれど、寝る直前まで、ずっと寄り添って話をしていた。
――プローポーズ、されたんだ。
まだ付き合っているという実感もわかないけど、これからのことを考えるだけでワクワクする。
掛時計はちょうど8時を指していた。
ガイドツアーは9時に出発って言っていたっけ。
私は硬いパイプベッドからゆっくり起き上がった。
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