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「へへえ、そういうものですか?」
「眼の網膜と云うものは、人間の運命をあらわすバーコードなのさ」
「何ですか、その婆こんど、ってヤツは?」
「生まれながらにして人それぞれに付いている運命の個別番号で、マイナンバー制度と同じものだな。まあ、この明治時代の人間には百年早い話ではあるがね」
「何だか難しいことになっているんだね未来は。するってぇとオイラは仇討ちに適した眼を持っていると、そういう話でございますか?」
「左様。であるからして、仇討ちに天賦の才があるお前さんが戯作作家なぞしているから、まったく売れずに首をくくるのは道理であるな」
「そんな仕組みでございましたか。でも猫神様、復讐ヲ厳禁スるってんで仇討ちを禁ずる復讐禁止令が、今年のはじめに政府から発表になりましたよ」
「それは知っているが、まあ慌てるでないぞ、ここからが本題だからな。お前さんは西郷隆盛を知っているかね?」
「西郷吉之助様でございますね? 知っているも何も巷間ではエラい人気ですよ」
「その西郷が、今年に起こる明治六年政変というもので政界から追放されて、そこから坂を転がるように追い込まれ、西南戦争で自決する運命にあるのじゃよ」
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