復讐するは猫にあり

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そう云って魯文がツツっと裏手に駆けて行くと、しばらくして掌に二つの眼球をたずさえて戻って参りました。 「どこですか猫神様。眼が見えないから勝手が分からねえや」 「ここだ魯文よ。良しよし。両の眼球を持ってきたな。しばし待つのじゃぞ。いま西郷の眼球と交換してくるからな」 そう猫神が一言すると、ドロンと消えてしまいました。 不安に怯える魯文が、また首吊りの紐をいじっていると── 「待たせたな魯文よ。約束通りに西郷の眼を持ってきたぞ。これを交換することによって両者の運命は好転するはずだ」 「ああ良かった。猫の詐欺に遭ったのかと思いましたよ。その西郷さんの眼を、グリグリとオイラの穴に差し込むと、嗚呼、見えました見えましたよ。やっぱしお天道様が見られるのは倖せだね」 「しからばこれにてご免。また逢うこともあるまいよ」 そう云って猫神がまたドロンと消えて、あとには喜悦した表情の魯文だけが残ったのです。 それから四年の時過ぐる頃、また魯文の前に黒い毛並みの猫神が現れました。 「どうしたことじゃ。西郷は西南戦争で自刃して、歴史は元の通りで直っておらぬ。いったいどういうことなのじゃ!?」
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