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復讐するは猫にあり
「お前さん、首を吊るのはちょっと待て」
今にも腰布で首を吊ろうとする男に、制止の声をかけた者がいました。
「誰だい、オイラはこれから首を吊って三途の川を渡る算段なのに、それを止めるケッタイな野郎はどこのどいつだい?」
「我輩じゃよ。お前さんの足下にいるぞ」
「何だい嫌だね。もう涅槃に行ったのか気が違ったのか、猫が喋っているのを聞いちまったじゃないか!?」
男が驚くのも無理はありません。
ボロ畳の上にチョコンと座して喋っているのは、一匹の毛並みの黒い猫であったからでございます。
「嫌だねどうも。天下の御一新で、猫も偉そうな口をきける文明開化の世の中になっちまったのかい」
「それはちょっと違うぞ。我輩は猫神である。未来から来た猫型の神で、そうさなドラ右衛門みたいなものだと心得よ」
「土左衛門なんて縁起が悪いね、まるで水死体じゃないか」
「未来ではそのような漫画が流行っておるのじゃよ。それよりもまずは、その貧乏臭い首吊りは止めて吾輩の話を聞くが良いぞ」
「貧乏なのはオイラが売れない戯作本を書いているからだい。それが祟って世をはかなんで首を吊ろうとしていたのさ」
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