不幸な宝くじ

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電話で話を聞きつけた娘が、さっそく私の自宅に帰ってきた。 3人揃ったところで、まず長女が話し始めた。 「長男が海外の大学に留学したいから、援助してほしい!」 次に、次女が話し始めた。 「自宅をリフォームしたいから、援助してほしい!」 最後に、三女が話し始めた。 「主人が新しいお店を出店するから、援助してほしい!」 娘たちは、自分の都合ばかりを言っていた。 妻は、 「海外にでも旅行したいなぁ…」 と言い始めた。 妻は、娘たちに、 「あなたたちは、もう嫁に出たんだから、自分のことは自分でしなさい!」 と少し怒った口調で話した。 私は、できれば皆の希望をかなえたいと思った。 しかし、妻と娘たちの要求は、徐々にエスカレートしていった。 あれがほしい、これがほしい…といったように。 妻と娘は、拾った宝くじを何とか自分のものにしようと、お互いに譲らない発言が多くなってきた。 このため話し合いは、少しずつ険悪な雰囲気になってきた。 あげくの果てに、妻は私に遺書を書いてほしいと言い始めた。 私は、とてもむなしい、やるせない気持ちになってきた。 ほとんど無言だった私は、妻と3人の娘に、 「どうするか、考えておくよ!」 とだけ伝えた。
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