不幸な宝くじ

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私は、宝くじの使い道を考えていた。 (そもそも拾ったものを、自分の懐に入れてもいいものだろうか?) 私には、少し罪悪感があった。 この宝くじを手にしたことで、私の家族は、皆自分勝手なことを言い始めた。 私の家族は、皆優しい思いやりのある家族だったはずだ。 それなのに、大金を手にしたとたん、人が変わってしまった。 私は、このことがとても悲しくて、ショックだった。 私は、今までの仲の良い家族を取り戻したいと思った。 私は、この宝くじは、家族に災いをもたらすと感じた。 私は、今の生活に何の不満もない。 また、特に贅沢な生活をしたいとも思っていない。 だから私は、 (この宝くじは、なかったことにしよう!) と考えることにした。 私は、宝くじを何か人の役に立つことに使おうと思った。 私は、この宝くじを、どこかに寄付しようと考えた。 どこに寄付しようかと悩んだが、私が表だって寄付するのは、この宝くじが拾ったものである手前、できるだけ避けたいと考えた。 そこで匿名で、今ボランティアでお世話になっている児童福祉施設に寄付しようと考えた。 私は宝くじを、差出人の自分の住所と氏名を記載せずに、児童福祉施設の郵便受けに投函することにした。 封筒を用意し、次のような簡単なメッセージを添えた。 「この宝くじは、当たっています。  ぜひ、施設の子供たちのために、お役立てください。」 私は、何の迷いもなく、この封筒を児童福祉施設の郵便受けに投函した。 その後、妻と3人の娘には、宝くじは児童福祉施設に寄付することを伝えた。 すると家族の皆から、なぜそんなことをするのかと責められたが、私は反論する気にもなれなかった。 もう送ってしまったと伝えると、妻と3人の娘は諦めたのか、とてもがっかりした表情をしていた。
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