第1章:始原

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稜はまず食料を確認し始めた。先日買い物をしたばかりということもあり、幸い食料はある程度あった。稜はあまり自炊をする方ではないが、無性にハンバーグが食べたいとあれこれ買っていたのが思わぬ展開で役立ったのである。 「食料は1日一食として元からあるカップ麺なんかも合わせると大体3週間から1ヶ月ってところか…」 そうぼやくと次に稜はまた窓の外をのぞいた。稜は元々4人家族ということもあるが、母親の収入がそこら辺の会社の社長の年収と大差ないくらい多かったため、かなり大きい一軒家に住んでいた。人によっては豪邸と呼んでもいいくらいの大きさである。庭の前には厳重な自動で開閉する門がそびえ立っているし、そこをゾンビが乗り越えてきたとしても玄関もオートロックのためそうそう家に乗り込まれることはないと考えている。ちなみに無理に入るとアラームが家中になり響くというトラップ付きである。 (籠城するのは問題なさそうだけど食料が少し心許無いな…後は万が一のために武器か…たしか就学旅行で買った木刀がクローゼットにしまってあったな) クローゼットを漁ると木刀の他にもエアガン等もあったがゾンビ相手に効果があるとは思えないため、木刀だけを取り出す。なんでこんなもん買ったんだと昔の自分に叱責を入れ、とりあえずは武器の確保はできたようである。 一通り籠城するための準備を終わらせ、稜はまた外の様子を確認しだした。 (これから夜になる…やつらが何を元に人間を襲っているのかはわからないけど生者を近寄らせないということも含めて明かりは点けない方がよさげだな…極力音も出さないようにしないと…) それから…と稜は思考を続ける。どれだけ籠城するかもわからないが情報がないためできることは全てやらなければ、それこそふとしたことで奴らの仲間入りを果たすことになるためである。 (とりあえずは夜は日が落ちたらすぐに寝て、無駄な体力を使わないようにして、昼は奴らの様子を観察して少しでも情報を集めなくちゃ…) そんなことを考えながらその日の夜は過ぎていった。これから稜は上記のサイクルを続けて生活していくことだろう。
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