第1章:始原

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(ここまでは良い…勝負はこれからだ…) 自動開閉の門のためそれなりに音はでた。 そのせいかゾンビは門に体当たりを繰り返しそのせいでさらに周りに音が響いていた。 (早く仕留めなきゃ厳しいか…) 稜はその手に木刀を握りしめ、玄関の扉をゆっくり開けた。 ゾンビは相変わらず門に体当たりを繰り返していた。 そこで稜は木刀で玄関の扉を叩き、音を響かせる。 「ウァ?」 ゾンビが振り向く。 (そうだ!こっちにこい!) 稜はゾンビが振り向くとすぐに家の中に戻る。 慌てて戻ったためかドタドタと音が響き、そのせいかゾンビもすぐに稜を後を追うため家の中にふらふらと入っていった。 稜は玄関のすぐ奥にいた。 このゾンビは生全目がよかったこともあり3メートル程先にいる稜の姿をはっきりと捉えていた。 『喰う』 ゾンビは自らのその欲求のためだけに稜に近づく。 しかしそれはなされなかった。 グシャッという音が辺りに鳴り響く。 ゾンビが気づいたときには既に頭を潰されていた。 「ハァハァ…」 緊張の末の稜の息切れが辺りに響く。 簡単なことだった。 ゾンビが玄関に上がったと同時に設置した物干し竿に足を引っかけゾンビは横転。 それと同時に稜が木刀で頭をかちわっただけだった。 ゾンビに全くの反撃を許さずに稜は無事に初めての戦闘とは言えないような内容を乗り越えることができた。 しかし稜の顔には安堵や達成感の表情はなかった。 そこにあったのは前回と同じ醜い笑みだった。 ふと稜が今は動くことがなくなったゾンビに近づく。 うつ伏せで倒れていた死体を仰向けにする。 稜の目は血走り奴らのようになっていた。 そして稜はそいつの首に噛みついた。
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