第1章

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 街灯に照らされながら、公園の中を歩いていると手を繋いでいるカップルの姿が目立った。  クリマスが徐々に近づいてきているせいか。そんな言葉が頭の中でちらついた。  自宅のアパートに着いて玄関の扉を開ける。部屋に入ってから、外と室内の気温に変化を感じることがなくなっているのに気づいた。  9月頃は、暖房をつけていなくても部屋の中に太陽の光が入っていた。  その頃は、部屋の中に入ると温もりを感じることが多かったので寂しいと思う気持ちは少しばかり薄れた。  そんな温もりが日に日に失われていく季節は、人肌が妙に恋しくなる。そんな、今の現状は、残暑より厳しいと感じた。  冷え切った部屋を暖房で温める為に机の上に置いてあるリモコンを手に持ってから、暖房のスイッチを押した。  変わっていくのは、季節だけ。そう思うことが当たり前になっていったのは、同棲していた彼女が部屋を出て行ってしばらくした頃だった。  仕事が終わり家に帰宅してみると、机に一枚の置き手紙があった。  その手紙には、色んなことが書かれていたが、その中でも一番と言って良いほど強烈な言葉が添えられていたのを今でも覚えている。あなたは、いつまでたっても変わらない。彼女の言葉の意味が当時の俺には、理解できなかった。
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