第1章

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 私は、5年前に付き合っていた元彼のことを今でも引きずっていた。  抱えきれなくなった私は、最近あった出来事を彼に話すことにした。  『ねえ』  彼は、テレビを見ながら、私の話を聞いているようで笑いながら『何?』と言った。 『あのさ。私の元カレが宝くじで一億円当てたんだって』  彼は、テレビを見ていたが、顔をこちらに向けてから、怒った顔をしていた。 『はぁ?それで?』  あまり良い話ではない。自分でも理解していたが、話さずには、いられなかった。 『酒浸りで胃をおかしくして入院だって』 『ふーん。だから?』  あの人を傷つけた罪悪感からなのか。あの人の両親から連絡があったからなのか。少なくとも見舞いに行こうか、迷っていたのは事実だった。  あの人は、私と別れたことを両親に話していなかった。  その事実を彼に打ち明けようかと思ったが、なぜかできなかった。 『いや、別に』 『なんだそりゃ』  私の迷いが、彼に伝わってしまったと思った。  彼は、怒った顔を崩さない。そのままテレビへと視線を移した。 『そんな怒らなくたっていいじゃん』  彼は、テレビを見ながら『うーん』と適当にあいづちをしている。
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