序章 動き出した彼らの日常

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その日は、いつも以上に平凡で、当たり障りない一日だった。 いつものように起きて、いつものように学校に行き、いつものように居眠りをして、いつものように帰る。 ただ、いつもと違ったのは、俺の喉がいつも以上に乾いていたこと。 いつもはちゃんと取り出せるはずの小銭が、俺の指をすり抜けて地面で音を立てたこと。 いつもはさっと拾えるはずが、俺から逃げる様にころころと転がって自販機の下に潜り込んでしまったこと。 そんないつもとは何かが違う空気の中で、日本人特有のもったいない精神を発揮して自販機の下に手を突っ込んだ俺は。 「…どこだよ、ここ」 次の瞬間、いつもとは全く違う、己が目を疑うような風景の中に立ち尽くしていた。 ――――――――――― その日はいつもと同じような、当たり障りのない一日だった。 いつものように起きて、いつものように家事をして、いつものように仕事をして、いつものように買い物に行く。 いつもと変わらない、数百年続くこの日常の中で、俺はいつものように眼下を見下ろす。 生まれてからずっと変わることのない、賑やかで優しい景色の中で、穏やかな空気をすっと吸い込んだ俺は。 「…今日も平和だ」 ゆっくりと瞼を上げ、いつもと同じ、ゆったりと流れる平和な時間に目を細めた。 ――――――これは、とある創作者たちの思い付きから始まった、彼ら二人の日常の物語。
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