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「……え」
魔王に就任してから遭遇したことのない事態に、不覚にも扉を開けた格好のまま固まってしまう。
少し長めの茶髪にこげ茶の半眼、緑の旅装束に空色の外套を羽織り、頭に青い石のはまった額当てをつけたその男は、緑の服の大半と外套の裾を血で濡らしたままぽりぽりと頬をかいた。
「あー、朝っぱらから悪いんだけど、水場貸してくんない?鉄臭くて…」
ことりと首を傾げ、表情を変えずに言う。
何があったかは知らないが、確かにこのままではまずいだろう。
これから来るであろう配達員など、泡を食って卒倒してしまいそうだ。
「…わかった。入れ」
ひとまずこの鉄臭い人間を受け入れることにする。
相手が人間であるということが少し気になるが…まあ、もしこれが罠でも問題ないだろう。
扉を開けて、入れ、と手で促す。
人間は「さんきゅ」と言って、ほっとしたように少し笑った。

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