曼珠沙華の彼女

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お待たせしました、と言葉を添えてラッピングを施した薔薇を差し出せば、代わりに渡された千円札。 「サンキュ。釣りは楽へのお小遣いってことで……少なくて悪い」 「……ありがとう」 こういうところが大人の余裕なのかな。 俺には全く持ってない羨ましい魅力。 思わず溜め息が漏れた。 「お客様に溜め息は一番ダメだろ?」 「ご、ごめん……。ただ徳みたいな大人の余裕が欲しいなって思って」 「なんじゃそりゃ」 意味分からんと笑い飛ばされたって、俺には真剣な悩み。 余裕があったら赤毛の彼女は今も俺の隣にいたかもしれない。 そんな馬鹿みたいなこと考えたって過去も……きっと未来も変わらない。 ただの妄想だってことは自分が一番分かってるんだ。 「……棘ってそんな怖い?」 「へ?」 突拍子もない話に首を傾げる。 いきなりなんだよ。 「薔薇の扱い方、慎重すぎ。まるで壊れ物かってぐらい」 「お客様への商品だし……それに刺さらない方がよくない?」 俺の意見は一般的だしおかしくはないはずなのに徳は声を出して笑った。 ビビりやすいから正直びっくりした。心臓に悪い。
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