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長い始業式を終えて向かった新しい教室。
運がいいことに、窓側の日向があたるいい席だった。
実に眠るにふさわしい。
特にこの季節はぽかぽかしてて気持ちいいだろう。
私の前の席は、幼なじみ。
斜め前は……休みなのか席が空いている。
「佐伯さんは保健室だって」
「……? 誰それ」
「希の右前の席だよ」
「……ふーん…って、よく分かったな」
「だって見すぎだから。佐伯さんのことは、佐倉くんに聞いたんだ」
佐伯さんに佐倉くん?
聞き慣れない名前に首を傾げると、クスリと笑われた。
笑ったのは慧じゃない。
隣の席に視線をやれば、はにかんでいる男子。
「はじめまして、俺が佐倉です。佐倉楽……がくは、楽しいっていう字を書きます」
「佐倉……楽」
丁寧な挨拶と共に、差し出された手。
なるほど、握手か。
嫌がる理由はないから握手を交わす。
「よろしく楽。私は大川希。のぞみは、希望の希って書くんだ」
「希……いい名前だね。大賀くんの幼なじみなんだっけ」
「うん、一応」
「一応ってなに、一応って」
慧が私の頭を指で小突く。
他の女子にはしないだろうに。
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