第1章

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青空が気持ちいい朝です。新潟市西蒲区巻漁港の駐車場にいます。車から降りて大きく胸を反らせるとコクっと何番目かの背骨が鳴りました。青い海。白い雲。緑に大きく横たわる佐渡の島影。ああ、新潟は最高です。群馬ではこうはいかない。なんてかわいそうなんだろう。群馬に生まれなくてよかった。なあ、セイプクチン(5)。 さっそく堤防によじ登ったり降りたりを二人で繰り返し、「怖い」という結論にたどり着いた二人はテトラポッドに腰掛けて一発鳴らしてみます。じゃあ何吹いて欲しい?とセイプクチンに聞くとアンパンマン!と答えました。 アンパンマンのマーチ 「プクも歌って」 「やだ」 「えー歌ってよー」 「やだやだやーだーやーだやだー」 この歌の歌詞の素晴らしさは皆さんもご存知だと思いますが、今朝のセイプクチンは全編替え歌で、それも「やだやだ」だけで歌い切りました。 波打ち際にいきます。波に触ろうとして近づいては逃げる子供。皆さんも覚えがあると思います。これは子供の本能なのかもしれません。靴が濡れて大変なことになっています。これからこの足で保育園に行こうというのに。子供の本能はしょうがない。 僕はハーモニカを、本能で吹きたい。どうすればいいのかずーっと考えています。考えるのをやめる日が早く来て欲しいと思っています。 海鳥がすぐ近くにうずくまっています。セイプクチンと恐る恐る、近づいてみます。 海鳥は思ったよりずっと大きく羽ばたいて、ゆっくり飛び上がります。 でも、さっき僕らがいた堤防の上に止まりました。もっと高く飛べばいいのに。 飛べない事情があるみたいです。海鳥にもう一度この歌を捧げます。 だから君は飛ぶんだどこまでも。 また明日。
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