第1章

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司令に従って泊まった宿が、まさかあの須田さんちの旅館だったなんて。どうしようどうしようあわわわわ。というのが本音でして、こういう場合、僕の場合はですね、ハーモニカが無性に吹きたくなって、まあ吹くばっかりじゃあれなんで、たまには吸う訳ですが、とにかくあわわわわってなっていたんです。 そう、ハーモニカは吹いたり、吸ったりその度に音が出る、とっても珍しい楽器です。どうしても深呼吸になる。だからあわわわわっていう気持ちも、斜向かいの第四銀行の前のベンチにどかっと座って演奏するだけで、スーっと落ち着くんです。産まれたばかりの彩綾さんのために、ママが気持ちよく子育て出来ますように、ジャイアンツが日本一になれますように、と願いを込めて吹いたっちゃ吹いたんですが、それより何より、僕はいつだって自分のために吹くし、自分のために吸う。 ケ・セラ・セラ 照れるので場所を変えて小出橋の方に行きます。もともと今夜は魚野川のせせらぎの中で演奏するつもりでした。もう真っ暗でそこに川があるってくらいしかわかりません。雨上がりのそよ風が心地よい夕暮れ時です。 第1問 川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。 と言ったのは誰でしょう? ①紀貫之 ②鴨長明 ③北条司 ④布施明 ⑤芹沢鴨 正解は、⑥さっきの僕。でした!小出に行くなら須田屋旅館!アットホームなおもてなしと川のせせらぎ。今夜はゆっくり寝ます。 また明日。
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