第1章

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心地よい目覚めのしばらく後、「道の駅ゆのたに」に車を停めて、佐梨川にかかる吉田橋から川を見ていました。岸は片方だけコンクリートで整備されていますが、もう片方は岩がゴロゴロしています。おばあさんが川で洗濯しそうな、上流から桃が流れてきそうな近頃あまり見かけない川です。 石作りの幅の広い階段を降りてみます。階段を下りながら演奏するとアイドルになったような気がします。階段を下りながら、今日の曲です。 川の流れのように ヨモギ、オオバコ、エノコログサ、シロツメクサ、雑草にもそれぞれ名前があります。このパーっと開いた花火みたいなのはなんて言うんだろう。ハナビグサかな。今日のハーモニカはこいつらに捧げます。ただそこに生えています。駆け寄って、まあ綺麗!と言ってくれる人はいません。踏まれる事もあります。それでもしぶとく、雨の日も風の日も、そこに生えている事をやめない。 僕も、そうありたい。 そう思って、こうして毎日演奏しています。いつか、面白い事が起きるかも知れない。起きないかも知れない。 大きな桃が、流れてきました。佐梨川ではこういう事がよくあるのかもしれません。あれ、岩に引っかかって動けなくなっています。どうしよう。と思ったら…どんぶらこ。と動き出しました。ほう、まさにどんぶらこと言う表現がぴったりです。その先には滝があり、勢いをつけて桃は川を下って行きました。 地図さえ無い、それもまた人生 今頃、あの桃はどうしているでしょうか。誰かに拾われるも良し。そのまま魚野川、信濃川、そして日本海にでて、佐渡沖、カムチャツカ、ベーリング海峡を越えてニューヨークを目指すも良し。 また明日。
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