過去を捨てた代償

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 自分の名前が嫌いだ。  『美麗』なんて名前を聞いて、どんな可愛い子なんだろうって勝手に期待され、勝手にガッカリされる。 「っんだよ、アイツかよ、美麗って」  私が好きで名乗ってるんじゃない。親が勝手につけたんだ。  迷惑してるのは私の方なんだから、これ以上迷惑顔で私を傷つけるのはやめて欲しい。  自分の顔が嫌い。躰が嫌い。  情けなく下がった眉も、一重に限りなく近い奥二重も---瞼の肉が厚すぎて入り込んでしまうのだ。  肉厚な丸みのある鼻も。少し尖った顎も。  食事制限しても運動してもすぐにリバウンドする躰も。  人より体毛が濃いのも。  ギリギリBカップの胸も。  自分の性格が嫌い。  心の中には鬱々と溜め込んでいるのに、口に出してはっきりと言えない自分が。  嫌われたって構わないと思いながらも、愛想笑いしてしまう自分が。  胃がキリキリと痛んで顔が上気するぐらいに嫌な思いをしても、押し黙って耐えてしまう自分が。  ーーなによりも、自分自身を好きになれない自分が、嫌いだ。
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