過去を捨てた代償

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 自分を更に嫌いにさせられる原因。  双子の妹、知子。  地味な名前に似合わず、華やかな顔立ち。豊かな胸の膨らみとは対照的な華奢な躰。  二卵性双生児は別の遺伝子を持って生まれてくるとはいえ、あまりの違いに神様を恨みたくなる。 「双子なのに、全然似てないのねぇ......」  その言葉に含まれる意味に、私は幼少の頃から気付いていた。  名前を間違えられたのも一度や二度じゃない。誰もが私たちの名前が逆ならぴったりだったのに、と思っていた。  実の親でさえ......  自分の子供はみんな平等に可愛い、なんて大人が子供を傷つけないための嘘だ。  母が努力しているのは知っていた。 「美麗は可愛い。お母さん、美麗のこと大好きよ」 『可愛くないけど、大好きよ』って言ってくれた方が、よほど嬉しかった。罪悪感を滲ませて嘘をつく母親の表情が、私の心に刃となって傷つけていたなんて、気づきもしていなかっただろう。
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