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とりあえず。とそこで、紫苑の少年が現状の打開策を何故か提案した。
「オレと後一人くらい、あの屋敷に侵入してみる気、ある?」
「って……オマエ、情報提供だけじゃないのか?」
幼馴染みはともかく、少年に悪友を助ける大きな理由はないだろう。それでもわざわざ事に関わる少年に、彼は少し眉をひそめる。
少年は僅かに不機嫌そうに、彼を上目使いで睨むように返す。
「あの屋敷のことは、オレも探ってたって言ったろ? 一応無関係じゃないってこと」
それに幼馴染みは顔を暗くし、最早満面の不安を隠さなかった。
「でも――……タツクが逃げられないような所、危なくない、ラスト君?」
その目敏さが訴える、本能的な危機感。緊張した顔付きで少年をじっと見つめて尋ねた。
今度は空色の流人の彼女が、おっとりと穿った作戦を提案する。
「もしも『千族狩り』なら、これからディアルスに運ばれるよね? それを待って、屋敷から移動させられる所を狙うとかはどうかな?」
しかしそれは、彼らには難しい相談だった。
「いや……あまりゆっくりはしていられないんだ」
なるべく一カ月程度で里に帰るように、彼と悪友は言われている。それが過ぎれば、何があったか少なくとも報告はしないといけない。
「タツクもどんな目に合うかわからないし。それなら……」
そして彼は、紫苑の少年をまっすぐに見た。
「オマエが協力してくれるなら、俺とオマエで、その都市長の屋敷に行ってみないか」
少年の提案には自分が乗ると、彼にとっては当然の結論をそこで告げる。
紫苑の少年は、何故かちらりと幼馴染みを見た後、改めて彼を見返してきた。
「オレは別にそれでいーけど。ねーちゃん達は……それでもいいの?」
「……」
「……」
この時の少年の問いの理由を、彼は後々、痛いほど知ることになる。
「アフィとアシューは、俺達が捕まった時は、アフィが言った方法でできれば助けてくれ。無理そうなら里に帰ってくれ、それだけだ」
「……うわぁ。さりげなくキラーパスするね、レイアスってば」
幼馴染みはたははと苦笑い、空色の流人の彼女は珍しく無表情に沈黙している。
心配げな彼女達に、大丈夫と少年は不敵な笑顔を向けた。
「オレがついてて、負け戦なんてさせる気はないよ」
本当に、既に緊張している彼より余程頼りになりそうな、紫苑の少年であるのだった。
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