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「……意外と言うか……物凄くイイ奴なんだな、オマエ」
「意味わかんねー! 何で嬉しそうなんだよ、キモチわりー!」
彼の右手を引っこ抜く勢いでぎゅううと掴み、少年はぼふっと赤い顔で彼を見上げる。その姿に彼は、不思議なほどに心が安らぐ。
そのまま穏やかな苦笑――彼には珍しいくだけた表情で、少年の問いかけに答を伝えた。
「できれば殺したくはないが……有り得ないとは、正直言えない」
「……それならオレはダメ。悪いけど他を当たってよ」
少年もそれはわかっていたのか、申し訳なさそうな声色ではっきり返答する。
「力」あるものなら、誰もが抱えるその可能性。何らかの争いに巻き込まれ易いだけでなく、幼い頃の彼のように、自らの「力」に呑まれる危険性……そうした現実を考えれば、彼の返事は誠実だろう。
「じゃあせめて、今の手がもう少しだけちゃんと動くように調整できないか?」
「うーん。でもこれ、兄ちゃんが言うほどには壊れてないけどな?」
彼の成長に合わせる仕様であることで、確かに強度は落ちて傷むだろうと、ぺたぺたと義手を触りながら少年が言う。しかし上手く動かないのはおかしいと不可解そうにする。
そして、ぽつりと――
「……これ……――の仕事だ……」
その単純な造りと、精密さを併せ持った便利な義手に、少年は更に表情を暗くしていた。
「――?」
その後少年が喋らないので、とりあえず手を離して歩みを再開する。
「この紋様だけでも消す、というかアフィに返したいんだが、それも無理そうか?」
先日にそこに刻まれてしまった青黒い蛇について、彼は最後の質問をする。
そこで顔を上げた少年の返事は、驚くほど早く、そして怪訝そうだった。
「多分無理。オレもこんなの初めて見たけど、いったい何処でこんな呪い受けたのさ?」
「――へ?」
「よくわかんねーけど、怨念とかそういう類の気配だよ、コレ。悪い夢とか見てない?」
「……――……」
そう言われれば、最近の夢見の悪さは覚えがあったものの。それならもう少し前から、昨夜のような悪夢を見てもおかしくないように彼は思った。
「これはアフィを守るものみたいだし――悪い感じはしないけどな?」
むしろとばかり平然と言う彼に、納得いかなさげに首を傾げる、多感な少年だった。
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