CALL

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ザァァァァァァァァ ザッザッザッザッザッザッ 「ハァッハァッハァッ……」  指先がかじかむ程の冷たい雨が降り注ぐ中、私は慣れない手つきでショベルを一心不乱に操っていた為か、はたまた、自分が今、犯してしまった事に対しての妙な興奮状態からなのか。  身体は熱く、そして、頬は上気していた。 「あと少し……」  びしょ濡れになりながら、数回、ザッザッザッと、土をかければ、そこにあった穴は、その中に放り込まれた“何か”と共に、跡形も無く埋められた。 「この雨で、地面は慣らされて、何も無かったように固まるわね」  口元を、ニヤリと歪ませながらも、同情の色を露わにした瞳を揺らしながら、眉を八の字に下げる。 「美香。悪く思わないでね。同じ顔をし、同じ人を愛し、愛された貴女がいけないのよ」  彼女の不安定な表情からは想像も出来ない程、低く冷たい声が雨音に溶け込むと同時に、足早にその場を立ち去る。
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