プロローグ

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まあ、こうしていても始まらない とにかく詳しい話を聞いてみよう… 僕は八木沼探偵事務所のドアを開けた。 そこは霊感のある人を募集すると書いてあったわりに別段、変わったところ等はなくテレビのドラマとかで見るような至って普通の探偵事務所で 特に怪しい物や事が起きるという訳ではなかった。 事務所の中を見渡すと奥の方のソファーで横になっている男の人が居て 僕が近付くとむくっと起き上がった、見た感じいかにも寝起きだ。 「ふぁぁ、ようこそ八木沼探偵事務所へ ご依頼ですか?」 とあくびをしながら男は言う 「い、いえ、実は路地でここの求人広告を見て」 僕がそう言うと 「あぁ、助手募集の件だね。 僕がこの探偵事務所の所長で八木沼 幽亮です。」 そう言いながらも今、寝ていたソファーにどっしりと座る八木沼 幽亮と名乗る男の人は見た目は23~25歳ぐらいの若い男の人で身なりもそれなりに整っており、何か不思議な雰囲気を僕は感じたのだった。 「で…君、名前は?」 そんな不思議そうに見ていた僕に幽亮さんが尋ねてきた。 「あ、はい、僕は柏木 直也で高校1年生です。」 僕がそう何とか答えると 「直也君だね、広告を見て来たのなら一応、採用する為の条件があるのを知っていると思うけど… 君、霊感あるの?」 そう言って幽亮さんは僕を上から下まで見た後に 「まあ、テストしてみれば分かるからね」と事務所の奥からなにか箱を持って戻って来てまたソファーに座る。 「ここに貯金箱がある。」 そう言って机の上に置いたのはいかにも空き缶を再利用したといった粗末な貯金箱だった。 続けて幽亮さんは言った。 「中には十円玉が99枚入っている。 そしてちょうど今、ここに十円玉が1枚ある。」 そう言って幽亮さんはポケットから十円玉を取り出す。 「今から、僕がこの十円玉を貯金箱に入れる。 君には僕が入れた十円玉がどれかを当ててもらい それが当たりならば採用、外せばお帰り願うという訳さ」 何だか霊感とは関係無いような不思議なテストだと僕は思ったが 要は簡単なことだ、幽亮さんが入れる十円玉をしっかり覚えていれば良いだけだ。 平成四年の側面にギザギザがない十円玉を… 「では、入れるよ。」 チャリン♪ 幽亮さんは十円玉を中に入れ 貯金箱をしっかりと振って混ぜた。 「用意はいいね、 では、テスト始め!」 幽亮さんが掛け声と同時に貯金箱を開け中身を机の上に撒き散らす。 「えっ、これって…!」
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