152人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は驚きを隠せなかった。
何故なら撒き散らされた十円玉はどれもが平成四年の側面にギザギザが無い物だったのだ。
「驚いたかな?
すまないね、最近は霊感も無いのにあるフリをする輩がいるからね…
まあ、でも、君に本当に霊感があるならばわかるはずだよ。」
幽亮さんが不敵な笑みを浮かべて言う。
確かに、これではいくら入れる前の十円玉を覚えてても、一見したところでどれがどれなのかはとてもじゃないが分からない…
完全にお手上げと言った状態だ。
「さてと、じゃあ…分からないのなら、もう帰ってくれないかな、こちらも君みたいなのに構う暇もないくらい忙しくてね」
そう、言いながらソファーを立ち上がる幽亮さん
しかし僕だって、ここでおとなしく帰るわけにも行かない折角あるこの霊感や母の為にも…
「君に本当に霊感があるのならばわかるはずだよ。」
幽亮さんが言ったあの言葉…
そうだ、僕は今まで見えないものや聞こえないものに極力関わらないようにしてきたんだ。
でも、もうそれはしなくていいんだ、なら、今、僕が見るのは…
僕は机の上に広がる十円玉を良く見てみた
色、形、文字、その全てがすべて全く同じ十円玉だが、僕は冷静にそして…
「はい、これです。」
と迷い無く、その中から1枚を取り出して幽亮さんに手渡した。
「おや…分かったのかい?」
訝しみなが幽亮さんは言った。
「えぇ、これで間違い無いです。」
僕ははっきりと言った。
それでもなお、幽亮さんは僕が渡した十円玉を疑いながら見ているが、僕には確信があった。
暫くしてと幽亮さんが急にあの不敵な笑みを浮かべながら僕を見て言った。
「当たりだよ、合格だ!」
やったー!、僕は心の中でガッツポーズをする。
「因みにどうして分かったのか、その理由を聞かせてくれるかな?」
いつの間にか隣に立っていた幽亮さんが尋ねる。
「あっ、はい、実は……」
僕は幽亮さんに説明をする。
机の上に広げられた十円玉をあの時、僕が冷静に見渡した時
ふと、一枚だけ不思議なオーラが見えた。
僕はそのぼんやりと光るオーラのある十円玉を選んだのだ。
「そうか、見えたか…
実はこの十円玉はね、〇〇中学校でこっくりさんに使われた物なんだ、知らないかい?」
「〇〇中学校というと最近、何人もの生徒が自殺したとかいうあの中学校ですか?
何か月か前にテレビのニュースで
確か、いじめが原因で何人かの生徒が死んだって…」
「そう、表向きは生徒のいじめが原因になってはいるが
本当は生徒達が密かに行っていた
こっくりさんが原因さ」
「でも…その十円玉が何故、ここに?」
「自殺の原因を調査して欲しいとその自殺した生徒の中のある家族に頼まれてね、その際に見つけた物なんだよ。」
「この十円玉にはその生徒の思念が詰まっていてね、だからオーラみたいに見えるんだ。」
幽亮さんが十円玉を見つめながら言う
「それって何か害が有るのでは?」
「大丈夫、これをまたこっくりさんに使わなければ思念は発動しないし、それにそこまで悪い思念じゃないよ。」
最初のコメントを投稿しよう!