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「さぁ、着いたよ、ここが今回の依頼人の部屋だ。」
そう言って幽亮さんがドアのチャイムを鳴らす
表札の所には
703 長内 拓也と書いてある。
ピンポーン♪
「どちら様… ですか?」
か細い声が答えた後ドアが開いて中から痩せた男性が出てきた。
「どうも先程お電話頂いた、探偵の八木沼です
こっちは助手の直也君です。」
幽亮さんが答え、僕はすかさずドアを開き支える、そうしないと今にもドアが閉まってしまいそうだったのだ。
「どうも、よろしくお願いします…」
よく見ると男性は顔色がとても良くなく立っているのが不思議な感じだった。
「僕は…長内 拓也と言い…ます
どうぞ…とにかく…お入り下さ…い」
僕と幽亮さんは今にも、倒れそうな拓也さんに連れられ部屋の中へと案内される。
部屋の奥に進むにつれ僕と幽亮さんはお互いに顔をしかめた。
玄関先もそうだったのだが部屋の中はもっと酷く
ちょっとしたゴミ屋敷かという具合の散らかり様だった。
僕が幽亮さんと何とかソファーに座るとお茶を持って拓也さんが来る。
「どうぞ、この度は…依頼を…受けて…いた…だき…ありがと…うござ…います。」
か細い声でしゃべる拓也さんだったが
良くみると拓也さんはほとんど眠りそうになりながら話をしていた。
「あの~大丈夫ですか?」
僕がそう訊ねると拓也さんは更にか細く消えてしまいそうな声で応える
「はぁ…すい…ません、最近…眠れて…いないので」
この時、僕はどうしてこんなにも拓也さんが憔悴しているのか分かりませんでした。
「拓也さん、確か依頼ではメリー…」
そう幽亮さんが話を切り出すと
♪~♪~♪
それを遮るように部屋の電話が鳴った。
「うわー!、止めてくれ!
頼む、助けてくれ!」
突然、さっきまでのか細い声とは思えない大声で錯乱する拓也さんを幽亮さんがなだめながら言う
「直也君、電話に出てくれ、早く!」
全く訳の分からないまま僕は言われた通りに電話に出る。
「は、はい!
あのーもしもし
はい? 町田さん?
いえ、違いますけど…」
「拓也さん、しっかりして下さい!
もう…大丈夫ですよ。」
僕が今掛かってきた電話は間違い電話でしたと
そう…伝えようとすると
「メリーさんが、メリーさんが……」
と拓也さんは呟きながらそのまま気を失ってしまった。
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