《15》

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  「京香?」 名前を呼ばれてハッとした。 先日の甘い夜を反芻している自分がなんだか恥ずかしくなって、私は曖昧に笑みを返す。 「どうした? 急に可愛い顔して」 「……また、からかって」 「本音だよ」 くすぐるように私に届く声は優しくて、甘やかすみたい。 単純な言葉で簡単に喜んでしまう私は馬鹿みたいだけれど、悪くないと思える。 「ねえ、雅広さん?」 「ん?」 「私、頑張るわ。そしてとびきり、いい女になってみせるから」 「今より? それは大変だ。俺もうかうかしてられないな」 冗談混じりの決意表明に、彼は私の手を取り、甲に口付けた。 あの時と同じ仕草だ、と気づきながら私はそれを受け入れる。 応援してくれているのか、何なのか。 特別な関係になっても、まだまだ読めないひとだ。 でも、それでいいと思える。 この人との間に不安が入り込む隙間はないから。 二人で笑い合うこの時間が、奇跡みたいに幸せだから。 私のプライドは、一度折れて、腐りかけて…… それでも支えを得て、再び莟をつけた。 愛を得て、自信を得て、希望を得て…… そしていつか、大輪の花を咲かせる予感を秘めている。 end. .
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