1803人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
まっすぐ見つめた先にいる佐川は、今度こそ驚いたように口を開いた。
夜の薄明かりでも、瞳が揺れているのがわかる。
それだけでも少し、満たされた気がする。
佐川の頬にある手は、そのままだった。
相手に触れることがこんなにも大事なことだと、彼に触れるまで知らなかった。
そこから何かが伝わってくれればいいだなんて、馬鹿げたことだと思いながらも願ってしまう。
私はまだ、微笑みを崩さなかった。
佐川からは余裕たっぷりに見えているだろうか。
そうだといい。内心は、別なのだから。
どうしてあんな台詞が出てきたのか、わからなかった。
佐川が私と同じ種類の気持ちで、私を想ってくれている……
そんな自信があるだなんて、とてもじゃないけれど言えやしない。
.
最初のコメントを投稿しよう!