宝くじ

「違う。違うの……」
「なにが違うんだ？」

そう云って私の前に投げ捨てられたのは
……通帳。

「おまえがたびたび金下ろしてたの、
知らないとでも思ってたのか？
大方男にでも貢いでたんだろ！」
「違うから！説明……」

……説明する、
そう云い掛けてできないことに気が付いた。
奥さんに毟り取られていたことは説明ができる。
でも、殺したことは？

「ほら、説明できないんだろうが！」

黙ってしまった私に、夫が迫ってくる。
嫉妬にまみれた、歪んだ笑み。
なにも云えなくて、
どうしていいのかわからなくて、
ただ突っ立っている私の首に
夫の手が纏わり付く。

そして、そのまま私は……。

……私の夫は。
明るくて優しくて。
いい人、だ。