宝くじ

……どうしてこんなことになったんだっけ。

ぼんやりとそんなことを思う。
私の目の前にはあたまから血を流した、
夫の同僚の奥さんが倒れている。

……なんで。
どうして。
私たちは倖せになれるはずだったのに――。

夫が気まぐれで買った宝くじが当たった。

当選金額は一億円。

あまりの額に聞いたときは
あたまがくらくらした。

夫とよく相談し、
当選したことは互いの両親にしか
話さないことにした。
その両親にも堅く口止めする。
当選で貰った冊子にも、
あまり話さないほうがいいってようなことが
書いてあったから。

当選金で一戸建てを買い、
それまでの賃貸マンションを出た。

マンションは夫と同じ会社の人間ばかりで、
息が詰まるような場所だったので、
ようやくのびのびと生活ができる気がする。