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奥さんは私の心を盗み見るみたいに、
じっと私を見つめてる。
「……嘘ね」
「嘘じゃないです!」
思わず出た大きな声に、店内の視線が集まった。
奥さんは何故か、
勝ち誇ったかのように私を見てる。
「やっぱり。
もっと当たったんでしょ?
一千万?五千万?」
「……三百万だけ、です」
「まあいいけどさ。
……あのね、お金、貸してくれない?」
「は?」
コップに刺さったストローを吸う。
身体が冷えた気がするのは、
まだ氷の残る薄いアイスコーヒーを飲んだから?
それとも……。
「うちの子、この間、
自転車で人に怪我させちゃって。
示談に十万必要なの。
急にそんなお金、用意できないし。
貸してくれない?」
「……うちだって。そんな、お金は」
「いいのよ、別に。
私はみんなに、
あなたが宝くじ当たったって本当かしら、
って話すだけだから」
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