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「なあ、愛。大丈夫か? 少し休もう」
そう言って圭介君は私を広場の端っこの休憩用のベンチに連れて行ってくれた。
「ありがとう。実はね、慣れない草履履いたからさ。ちょっと足が痛かったの」
私は心配してくれる圭介君に言った。
「そうかあ。ごめんな、気がつかなくて、俺って鈍感だからさ」
そう言って私の足を見つめる圭介君だった。
ベンチで私達は他愛もない事を話していた。会話が途切れそうになった時、圭介君が言った。
「なあ、愛。俺は愛が好きなんだ。つ、付き合ってくれないかな」
いきなりの告白だった。私の頭は真っ白になる。
本当なの?
圭介君も私の事を……。
私が混乱して返事もしないでいると……。
「だ、駄目かなあ?」
細い声で呟いた彼は私の顔を覗き込んだ。
「だ、駄目じゃない! よ、よろこんでっ!」
思わず叫んでいたわ。もう『よろこんでっ!』て何言ってんだか、私って。
「ほ、本当!? やったっ! ありがとう!」
そう言う彼は私の手を両手で包みこみ満面の笑みを見せてくれた。私が「圭介君が前から好きだった」って事は内緒にしておくことにするわ。
会場が暗くなった。
『ひゅ~~~っ ぱんっぱんっ!』
花火が上がる。私は花火を見上げながら、隣りに座る圭介に体を傾けた。圭介の肩に私の頭が乗っていた。
「ねえ、お祭りの時はもう少しそれらしい格好してきなよね」
私は彼に言った。彼は何も言わずに私の肩にそっと手をまわした。
「愛もそんな年頃になったんだな。」
愛の父親は寂しそうに呟く。
「そうね。愛は私が着た朝顔の浴衣を着て行ったわ。気に入ったみたいでね」
愛の母親は楽しそうに言う。
「来年は僕らも行こうな。由美。」
「うん。行こう。久しぶりに祐二の輪投げの腕を見せてね」
愛の両親たちも夏祭りに思い出があった。
そうこうするうち愛が男の子に送られて帰って来た。
「ただいま~っ!」
そう言う愛の右手には『くまのキーホルダー』がぶら下がっていた。
その日の夜、愛の家では祭の事で盛り上がっていた。
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