第1章

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「夜が明ける」 白色の港、あまりにも柔らかい、その肌に、船を待つ魚たち、街灯、古ぼけた信頼、どれもが身をかがめて、やっと得たはずの自由、記憶、真っ白な夜に、微生物たちでさえ、自らの宿命を素直に、受け入れる、ただの夜、その時のように、待ちわびた手紙を海へ沈めるように、投げ捨てた真珠、黒い天空の、瞬間の迷い、困惑、まな板に叩きつけられた不可視の魚たちのように、私は街灯にしがみつく。 高く唸る潮風、瞬きの中に鯨は居座り、狂った風が、私がいつまでも海と呼ぶ卑猥な過去が、優しく、穏やかに、失った全てを身に着けているかのように、街灯は酒場の天辺に消え入る教会、その鐘の生きた証さえ、克明に私の目蓋に連れ込んだ。 やっと、全ての迷いが、僅かな光の鐘、その一音の中へ、溶け込んでいく、そう期待する、許される、時間と空間を、私は確かにもう一度、夜が明ける、ただそれだけを、あなたへ伝えよう。
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