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海へ着くまで、そう時間はかからなかった。バイクを停めた途端、那津は海へ走り出した。智也も後から追いかけた。
「あー、やっぱり海はいいなー。嫌なこと全部吹っ飛ぶ。」
那津の表情がほがらかになった。
「智也もここで嫌なこと忘れなよ。」
「俺が嫌なことあったように見えるのか?」
「いや。なんとなく言っただけだよ。」
智也は那津の女の勘に少し驚いていた。
「鋭いな。」
「えっ?波がうるさくて聞こえねーよ。」
「別に。」
「ふーん。」
那津にはあまり関心がないようだった。
それから智也は那津の気がすむまで付き合っていた。長い時間那津は海を眺めていた。
「智也、帰ろう。」
「気が済んだか?」
「まぁね。」
智也には那津の無表情の中に、少し笑みが見えた。智也は何も言わずに、那津をコンビニまで送った。
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