第1章

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 やがて私は駅を降りた。隣りには「あいつ」がいる。  なんだ、同じ駅を利用していたとは知らなかった。 「先輩はどっちですか? 」  駅前の駐輪場で自転車を出しながら「あいつ」に聞いた。 「ん!? 君は?」 「私はこっちです」  私が一方を指し示す。 「ああ、同じ方向だね」  私と「あいつ」はご近所さんだったのか?  「あいつ」は私の手から自転車を取り、自らが押して歩き出す。 「あかりさん。先に歩いて。家まで送るから」  またまた、私の中の「あいつ」の評価が上がる。  普段であれば歩いても十分ほどの距離の自宅まで、どんどん降り積もる雪のせいで、倍の二十分も掛かってしまった。「あいつ」の押す姉の自転車は、雪に車輪を取られて、いかにも重そうに見えた。 「ここ? そっか。じゃあ、またバイトでね」  そう言って、冷え切って真っ赤になった手を振って「あいつ」は去っていった。今まで歩いてきた道を戻って行く。  私は後で知った。「あいつ」の最寄り駅は神木駅ではない事を。  やっぱり、「あいつ」はいけすかない! だって私の心を奪ったのだから!                 完
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