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翌朝。
寝不足と、モヤモヤした気持ちのまま出社する。
家にメイク道具がないから、ほとんどノーメイクで。
「はぁ……」
何か、みじめな自分にため息が零れる。
会社に着いて、足早にロッカールームに向かった。
そして、置き忘れたポーチを手にすると、洗面所に行く。
「誰も来ないうちに、メイクしちゃお」
私は、一番奥の洗面台の前に立つと、家から持ってきた洗顔フォームで顔を洗った。
冷たい水が、寝ぼけた頭を少しだけクリアにする。
洗い終わって顔を上げた、その時だった。
洗面所の入り口から、ヒールの音が聞こえてくる。
(誰か来る!)
スッピンなので、何となく顔を背けた。
カツカツと靴音は、どんどん近づいてきて、私の隣で、ピタッと止まる。
(他も空いてるんだから、隣に来なくてもいいのに……)
そう思った時だった。
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