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「あら、綾瀬さん」
不意に声を掛けられて、思わず顔を上げる。
(えっ……)
隣にいたのは……。
「いつも、こんなに早いの?」
そう言うと、彼女は妖艶な微笑みを浮かべた。
私の隣に来たのは……。
立花 葵だった。
私は、タオルで顔を拭いてから答える。
「……いつもじゃないです」
今日は、他の人達が来る前に、ポーチ確認してメイクを済ませたかったから、早く出社しただけだもん。
「立花さんこそ、何でこのフロアにいるんですか?」
ちょっと突っかかるような言い方になった。
立花 葵は、そんな私にも余裕な雰囲気で、鏡を見ながらメイク直しを始める。
「社長に頼まれた資料を取りに来ただけよ」
そう答えた後、彼女はコンパクトを仕舞うと、今度は口紅を取り出した。
事実を言っただけなんだろうけど、社長って言葉が、私の神経を逆撫でする。
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