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「そうですか。秘書のお仕事って、大変そうですね」
私はぶっきらぼうに言うと、化粧水を両手で顔に叩きつけた。
「そうね。他の職種にはない大変さはあるわ」
立花 葵は、形のいい唇に、ルージュを滑らせる。
私が使ったことないような深紅のルージュ。
「社長が、どうすれば仕事をしやすいか。常にそれを考えているわ」
「……」
この人……。
単に用事で、このフロアに来たんじゃないんじゃないの?
私に、こんな風に絡むために、わざと来たんじゃないの?
考えすぎ?
どっちにしても、さっきからイライラが募るばかり。
早く出ていってよ。
そんな私を煽るように、彼女は言ってきた。
「それにしても、綾瀬さんて大胆よね。ノーメイクで出社するなんて」
口紅を仕舞った後、彼女はクスリと笑う。
「ノーメイクで職場に来るなんて。私は、そんな自信ないわ」
……これ、ぜったい嫌みだよね?
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