4piece 揺れる心

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「そうですか。秘書のお仕事って、大変そうですね」 私はぶっきらぼうに言うと、化粧水を両手で顔に叩きつけた。 「そうね。他の職種にはない大変さはあるわ」 立花 葵は、形のいい唇に、ルージュを滑らせる。 私が使ったことないような深紅のルージュ。 「社長が、どうすれば仕事をしやすいか。常にそれを考えているわ」 「……」 この人……。 単に用事で、このフロアに来たんじゃないんじゃないの? 私に、こんな風に絡むために、わざと来たんじゃないの? 考えすぎ? どっちにしても、さっきからイライラが募るばかり。 早く出ていってよ。 そんな私を煽るように、彼女は言ってきた。 「それにしても、綾瀬さんて大胆よね。ノーメイクで出社するなんて」 口紅を仕舞った後、彼女はクスリと笑う。 「ノーメイクで職場に来るなんて。私は、そんな自信ないわ」 ……これ、ぜったい嫌みだよね?
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